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令和3年度大学入学共通テスト 国語 問題解説<古文>

今回は、第三問<古文>です。

 

第一問<評論文>の解説記事はこちらです。

www.manabiya-online.work

 第二問<小説>の解説記事はこちらです。

www.manabiya-online.work

 それではいきましょう。

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概要

今回は歴史物語の栄花物語からの出題でした。

古文は上記現代文の二題と異なり、試行調査の特徴が出ていたように感じます。

昨年のセンター試験と比べ、単語数は減っていましたが、設問と文章を理解することに時間をとられたのではないでしょうか?

総合して、難易度が高かったように感じました。

 

ただし、早稲田大学の2012年度人間科学部A方式で解いたことがある人にとっては、文意を読み取ることは容易で、設問もほとんど正解を出せたのではないでしょうか?

 

設問構成

問1はセンター試験と同様、傍線部の意味を問う問題でした。

問2~問5では、試行調査に類似する形式もありますが、基本はセンター試験と同様。しかし、選択肢が絞りにくい問題が多かったと思います。

 

全体的な話の流れを知っていた(読めた)、もしくは傍線部前後の単語の意味をきちんと理解できた人でないと、正解する数は少なかったのではないでしょうか?

 

問1 語句の意味 各5点

まず、傍線部の重要単語から考えていくことは変わりません。

(ア)でヒントになるのは、「え~ず」(~できない)と、「まねぶ」(真似をする、見たことや聞いたことをそのまま言う、習得する)です。

まず、これらの現代語訳がきちんと踏まえられていない、①・②・⑤を切りましょう。

そして、③にすぐに飛びつかないこと。

この直前を見てみると、

いへばおろかにて、

とある。

つまり、「言うといい加減になる」と言う意味なので、

亡くなった人を想うと「言葉にならない」

と考え、④が正解になる。

 

今まで通り、直訳で正解できる問題ではなかったので、面喰ってしまった人もいるかもしれませんね。

 

(イ)重要単語は「めやすし」(見た目の感じが良い)と「おはす」(いらっしゃる)です。

これは素直に③を選べばよし。

 

(ウ)重要表現は「未然形+ば」(~ならば)です。まずはこれを判別できることが大事です。

出でなば

 となっていますので、「出で」は下二段活用動詞の連用形です。

「な」は助動詞なので、完了・強意の「ぬ」です。

この部分だけ直訳すると、

「出たならば」となります。「已然形+ば(理由)」で訳している選択肢の③と④が切れます。

残る選択肢を切るためには、「里」の意味が大事になります。

「里」には、旧都の意はありません。自宅(住まい、実家)の意味があります。

したがって、①が正解となります。

 

問2 傍線部Aの理由 7点

この問題は2012年早稲田大学人間科学部A方式の問15で全く同じ問題が出ています。

すでに解いたことがある方は自信をもって解答できたと思います。

見たことない方もご安心ください。解説文を見ればお分かりになるかと思います。

 

まず注目しなければいけないのは、傍線部直前

内裏わたりの女房も、さまざま御消息聞こゆれども、よろしきほどは、

 

とあります。

また、これと似た文章が2行前にあります。

宮々よりも思し慰むべき御消息たびたびあれど、ただ今は夢を見たらんようにのみ思されて過ぐしたまふ。 

 これらの意味をざっくりとると、

長家は、妻が亡くなり、非常に落ち込んでいる。いろいろな人が慰めの連絡をくれるけれども、きちんと返す余裕がない

ということになります。

「よろし」の意味は、「まずまず、悪くない」です。

 

したがって、①が答えになります。

傍線部の「今みづから」だけではわかりにくいので、どういう心情なのかを読み取りましょう。

 

問3 傍線部Bの語句や表現の説明 6点

まず、傍線部の重要な部分は、

「もてまゐりにける」と「思い出できこえさせたまふ」です。

どちらも敬語が使われていますので、見ていきましょう。

「まゐり」は謙譲語です。今回は動詞の後ろについているので補助動詞

訳は「~し申し上げる」です。

つまり、傍線部前半は

「持っていき申し上げた」となります。

持っていったものは、1行前にあります。

この夏の絵を、枇杷殿にもてまゐりたりしかば~~

ここから、亡き妻が書いた夏の絵を持って行ったことがわかります。

次に、「させたまふ」を見てみましょう。

これは二重敬語(最高敬語)です。

したがって、後半部は

「思い出し申し上げなさる」です。

 

これら2点を踏まえると、④と⑤が切れます。

④で「すべて焼失」しているのは傍線部以降に記述がありますが、「自身の家に帰ったときに取り出して見よう。」と言っていますので、すべてではありません。

⑤は二重敬語の理解ができておりませんのでNG

 ③は訳ではよさそうなのですが、「それでもやはり」と訳すのは、「なほ」や「さすがに」です。

「ままに」は、「~つれて、~の通りに、~するとすぐに」です。

それでは、①と②が残ります。

正解は①なのですが、②の違う点を見てみると、

「妻とともに過ごした日々に後悔はない」の部分です。

現代語としてみると、合っていそうですが、前後の文章で長家が妻のこと、妻が描いた絵のことを回想していることから、妻との思い出を忘れられずにいる

とわかります。

 

問4 登場人物の説明

それぞれの人物について書いてある箇所を注意深く見てみましょう。

①「大北の方」は1行目で

大北の方、この殿ばら、またおしかへし臥しまろばせたまふ。 

 と書いてありますので、みんなと同じく悲しみにやられています。

②「僧都の君」は3~4行目で

法住寺には、常の御渡りにも似ぬ御車などのさまに、僧都の君、御目もくれて、え見たてまつりたまはず。 

 とありますので、見ることができなかったのは亡骸ではなく、亡骸を運ぶ御車です。

③長家は一見すると合っていそうですが、7行目は

ただ今は夢を見たらんやうにのみ思されて過ぐしたまふ。 

 と書いています。

「見たらむ」を細かく見ていくと、

「見・たら(完了・存続)・ん(む)(婉曲)と品詞分解できます。

訳としては、

「夢をみているような」です。

したがって、選択肢内の「夢であってくれればよい」とまではいかないです。

④「進内侍」は最初の和歌を詠んでいます。

契りけん/.千代は涙の/水底に/枕ばかりや/浮きて見ゆらん 

 最後の助動詞「らむ」は「現在推量、現在の原因推量、現在の伝聞・婉曲」です。

今回は、係助詞の「や(疑問・反語)」が直前にありますので、現在推量でいいでしょう。

したがって、長家に対して詠んでいますので、主語が違いますね。

正解は⑤です。

傍線部(イ)の直後が解答の根拠部分です。

 

問5 和歌の解釈 各8点

設問内に文章が置かれ、それを踏まえて解答するのは現代文・小説と同じですね。

まずは与えられた文章をきちんと読みましょう。

正解は③と⑥です。

①は、「ありきたり」、「誠意のなさ」が言いすぎでしょう。そもそも、長家は返答する相手を絞っています。(問2参照)

②は後半部分、「悲しみをなんとか慰めよう」ではなく、「先立たれることはもっと悲しい」と言っているのでNG

④は「悲しみを癒してくれた」ではありません。

⑤は後半「亡き妻との思い出の世界に閉じこもってゆく」が和歌の意味と異なります。

また、Yの和歌にある「方」は「人ではなく、方法」です。

 

まとめ

いかがでしたか?

新傾向の問題が出てきましたが、やっぱり勝負を分けるのは

古文単語」や「助動詞・助詞」の知識です。

知らない問題形式であっても、文意をきちんととることは変わりません。

重要語句はきちんと覚えておくことが必要です。

また、単語帳の意味が複数ある場合にはすべて覚えておきましょう!

 

今回の国語の問題の中で、古文が一番難敵だったと思います。

ここで時間をロス、失点が重なった人も多いのではないでしょうか?

 

次回は国語編最終回の第四問<漢文>を解説します。