塾講師時代の想い出
今日は、私が塾講師時代に一番印象に残っている生徒のお話をしたいと思います。
私が勤めていた塾は、個別指導も集団授業もあり、生徒のレベル・志向に合わせて個別と集団を使い分けていました。
その生徒は2年生春から通塾。私立学校に通っていたが、学校の授業の補習的な役割を求めて、やってきました。
個別の体験授業で私が英語と国語を担当。
生徒の情報をヒアリングし、いつも通りの授業をしました。
その際、彼はこういいました。
「内部進学も可能だけど、外部受験もしてみたい。」と。
大学の付属校だったので、そのまま学校の成績をキープすれば間違いなくエスカレーター式に大学に進学できます。
また、学校の補習といいましたが、英語が苦手なだけで、数学や社会は非常によくできる生徒でした。
私は、「じゃあ、今は外部受験をするための基礎力を付けよう。私の指導は厳しいけど、ついてこれるかな?」と笑いながら聞きました。
彼は、「はい!よろしくお願いします。」とまっすぐな目で返事をしてくれました。
それから1年、英語と国語を受講してくれ、毎週授業を行ってきました。
基本的な授業の方針は、
- 私が説明しながら板書
- 説明を聞いて不明点がなければ問題演習
- 丸付けを行った後、どれほど覚えているか説明してもらう
これの繰り返しです。
翌週には先週やった内容を私に授業してくれと頼み、定着度合いを確認。
基本的な飲み込みは早いものの、一過性なところもあり、さらに英語に対する苦手意識から、各単元の特長を混同してしまう癖がありました。
そして3年生に上がるちょうど今頃。
授業時に彼から、「本格的に一般で外部受験をするか、内部進学をするか考えなければならない。先生は僕の実力をみて、どう思いますか?」と聞かれました。
私は、「外部受験で受かるだけの力はある。ただし、今以上の努力をしなければ内部進学で行くよりも低い偏差値の大学になってしまう可能性が高い。」
と伝えました。
これは本音です。ポテンシャルは十分あるものの、まだまだ応用力がつかず、英語は単語やイディオムの定着が遅かったからです。
私の言葉を聞いて、彼は「わかりました。今以上に頑張りたいので、これからも教えてください。」と言いました。
また、この時期には3者面談があるのですが、そこに同席。
彼の進捗を保護者へ説明し、どれくらいの力を秘めているかをお伝えし、「外部受験」に絞ることになりました。
さらに、3年生ではほとんどの生徒が集団授業を受講し、切磋琢磨していくのが通常ルートでしたが、彼は「先生の授業がいいんです。」と3年生でも個別を受講してくれました。
さぁ、責任重大です笑
それからというもの、今までより確認テストの量と回数を増やし、彼に説明させる機会を増やしました。
「なぜその答えを出したのか、なぜ正解はこれになるのか。どういうルートをたどればその解答にたどり着くのか。」
毎回毎回聞いていました。
そして時間は過ぎ、センター試験。
彼はやはり英語がブレーキになり、滑り止めにギリギリ収まるか?というラインでした。
12月頃から学校の周りの生徒は内部進学ということであまり勉強をせず、話してばかり。
そんな中モチベーションを保つことは非常に困難だったと思います。
センターを終え、私のところへ来た彼は、こう言いました。
「先生、センターはだめでした。一般試験が少し怖いです。」と。
当然の考え方でしょう。私も現役生の頃は絶対的な自信を持ったセンター試験に惨敗。
(詳細は以下の記事をご覧ください。)
そして「浪人だけはしたくない!!嫌な後輩と同級生になるのは嫌だ!!!」と不純な動機で背水の陣を勝ち抜いた身です。
私は彼に、「この塾で一番厳しく指導してきた。その私の授業を2年間受けてきたのだから自信を持ちなさい。そんな弱気では合格する率は0だよ。大丈夫、今からやるべきことは基礎の確認。今から単語帳5周してきな。」と言いました。
厳しくいってしまったかもしれません。
ただ、私と彼が過ごしてきたこれまでの時間を考えると、このような叱咤が一番いいと思ったのです。
結果的にこれはいい方向に行きました。
彼は第一志望こそ落ちてしまったものの、内部進学でいくよりもずっと高いレベルの大学に合格しました。
合格発表日、彼は塾に電話をかけてきて、「先生いますか!?先生を呼んでください!!」と私を呼び出したそうです笑
電話に出ると、感極まったようで、「先生のおかげで合格できました。先生に言われなければ一般受験をしていなかっただろうし、最後までやり切れて本当によかったです。先生、本当にありがとうございました。」と泣きながら言ってくれました。
思わず私も泣きそうになってしまいましたが、そこは私らしく「何泣いてんの!笑 自分が決めたことをきちんとやり切ったのだから当然だし、受かると思ってたから電話するの遅いくらいだわ!笑」と笑いながら伝えました。
後日、保護者とともに私のもとへあいさつに来てくれ、「ありがとうございました。」と改めて御礼を言われました。
私の一言で、人の人生を大きく変えてしまったのだなと強く実感しました。
教育関係者だけでなく、どんな仕事であれ相手の人生を大きく変える可能性を持つということ、そしてそれだけの責任感を持たなければいけないことを痛感しました。
これからも教育に関心があるものとして、いろんなことを経験し、人として大きく成長したいと思います。